一日の仕事を終え、車を走らせること2分程
デニー・・・なんとかという摩訶不思議なファミリーレストランに入った。
新しいディスプレイの構成や、忙しい時期の段取りなど仕事の事は家で考えるよりも、こういう摩訶不思議なファミリーレストランの方が良い発想が思い付くのでたまに足を運ぶのである。
珈琲の香りは好きだが味が苦手な僕はいつも通り“個化個ー羅”という真っ黒な炭酸水を頼み、持参した資料を広げペンを走らせる。
ファミリーレストランには様々なお客が居る事に気付く
本を読んでいる人や、ほんを読んでいる人、
ホンを読んでいる人もいれば、HONを読んでいる人もいる、メニューを本の様に読んでいる人だっている。
ウエイトレスもそうだ。レジ画面を本を読んでいるかの様に見つめ、厨房にいるコックもフライパンの代わりに本を振りかざしている・・・
と言いたい所だが、訳がわからなくなってきたので本題に進みます。
今日は店内が込み合っていた為、カウンターに本を読みながら案内された僕はカバンに積めた資料を取り出し戦闘体制に入った。
10分位経過し、スムーズにペンを走らせていた僕の隣に一人の老人が腰掛けた。
そう、この老人こそが今回の主役なのだ。
老人は一本の煙草をふかし、珈琲を注文した。
その時、隣で僕のペンはアイススケートの“キム・ヨナ”ばりの軽やかな滑りをしていた。
すると、煙草を吸い終えた老人は何やら独り言を言い始めた。
「◇※◎#☆△」
ん?
「$%<☆◇」
んん?
アイススケートの“高橋大輔”並みの豪快な滑りをしていた僕のペンは徐々に止まり始めた。
「*★◇△◎♯!」
気になる・・
実に気になる・・・
僕は気になってしょうがなかった・・・
何だ?何を言っているいるんだ?
この時、僕のペンは完全にSTOPしていた。
それと同時に僕の目線は花の資料ではなく完璧にジジィ・・・・いや老人の口元を捕らえていた。
僕は全神経を耳に集中させジジィの独り言を聞き取ろうとした。
ジジィはこう言っていた。
「・・・さむい」
「・・・れいぼうがききすぎている」
「あー・・・さむい!」
「さむーい・・・さむい、さむい」
「さむいーさむいさむいさむいさむい!」
ずーっと言ってました。
結局ディスプレイの良い案も浮かばず、帰宅する事を決めた僕の肩は広辞苑の様に重かった。